
帰宅願望が強くなった時の対処法
介護現場では、『帰宅願望』を持つ利用者様は決して珍しくありません。
- 『もう帰らなきゃ』という小さな不安
- 『帰ります!』という強い意思表示
現場では、このようにさまざまな形で帰宅願望が現れます。
私が介護の現場で感じていたことは、『帰宅願望の根底には不安がある』ということです。不安が大きくなればなるほど、対応は難しくなります。
現場で同僚や後輩からよく聞かれた質問があります。
『帰宅願望が強い時、どう対応したらいいですか?』
私は必ずこう答えていました。
『不安が小さなうちに気付いてあげてください。そして早めに対処しましょう。』
もちろん、これで全てが解決するわけではありません。しかし、早めに気付いてあげることが何よりも大切です。普通の人でも、不安が大きくなってしまったらなかなか落ち着きを取り戻すことができません。
帰宅願望の方への具体的な対応例:
- 正直に伝える方法:
- 『今日は泊まりですよ。お部屋も用意してありますから安心してくださいね。』
- 優しい嘘を使う方法:
- 『夕方になったら○○さんがお迎えに来てくれますよ。それまで一緒に待ちましょうね。』
- 気持ちをそらす方法:
- 利用者様が得意なこと(例えば洗濯物をたたむ作業など)を一緒にする。
- 好きな音楽を流してリラックスしてもらう。
『帰りたい』という気持ちが強く出る前に、不安の兆候にいち早く気付いてあげることが大切です。

戸惑いや不安が表情や言葉に現れた時
介護施設に勤務していると、利用者様が戸惑いや不安を抱えている様子を目にすることがあります。時にはその不安が強くなり、『不穏』な状態となってしまうことも少なくありません。
実際に私も、介護を始めたばかりの頃は利用者様の不安や戸惑いを目の前にして、どうしたら良いか分からず自分自身も動揺してしまうことがありました。
しかし、今はそれが良くない対応だと理解しています。
認知症の方は、こちらが思っている以上に敏感で、まるで『鏡』のように介護士の感情を読み取ります。
ですから、こちら側が動揺していてはいけません。穏やかでいることが最も重要です。
私はいつもこんなふうに自分に言い聞かせています。
『ここは私の舞台。この方にとって、私は頼れる人、優しい人を演じる役者だ。』
もちろん、本当に優しい心を持っていることが何よりも大切ですが、『演じる』つもりで穏やかさを保つことも大きな効果を発揮します。
最後に、介護士として忘れてはいけないこと
認知症ケアにおいて最も大切なのは、介護士自身が『優しく穏やかな心』を持つことです。
介護は技術やマニュアルだけでは成立しません。相手を思いやる心、共感する気持ちを常に大切にすることが何よりも求められます。